本書は押井守監督と映画ライターの渡辺麻紀さんのインタビュー形式となっています。
押井守監督が自分の手で書いた本ではなく、他者との意見交換が交わされるので、他の押井守監督の本とは毛色が違い興味深かったです。
押井守監督が一人で語っている分には「まぁそういうものか」と受け止めていたものも、人と対談しているのを読むと「結構変わった考え方だなぁ」と感じることもあったり。
以下、気になったポイントのメモ書きです。
たとえて言うなら「イラクで失踪したときに、後先考えず、すぐに飛行機に飛び乗って現地に来てくれる人」かな。
P.20
↑押井守監督の友だちの基準です。だいぶハードルが高いです…。
以下はこの前提を理解した上で読んでいく必要があります。
自分の価値観を獲得するための努力をしていないから、世間や周囲の価値観に振り回される。
P.32
人生において必要なのは、自分を導いてくれる目上の人、師匠やマスターと呼ばれるような存在と、奥さんのように、自分はバカだということをいつも思い出させてくれる肉親や家族、そして一緒に何かを作ってくれる仕事仲間。もうひとつは、孤独にならないための小さきもの、つまり動物だよね。師匠、家族、仕事仲間、そしてイヌネコさえいれば人生、何の問題もないです。
P.41
孤独はよくないです。「人間ひとりであることよりは、悪とともにあることを望む」と言うくらいですから。
P.66
(略)人間が自分が所属する世界を欲しているから。そのなかに自分の席を確保したいからなんだよ。
P.73
(略)人は頼られたい、必要とされたい。そういう存在が必要で、イヌネコはまさにそうなんです。
P.102
人間は本能的に”小さきもの”を保護したい、守りたいという思いがある、まあ、最近はそういう部分が欠落している人間も多いんだけど、人間は本来そういうものなんだよ。本能である以上、満たさなきゃいけないわけ。
↑自分の価値観を確立した上で、社会で自分の立ち位置を見つけようというような話かなと。
社会的に孤立するのはよろしくないらしい。
個人的にはお金の問題がなければ孤独に暮らしたいものですが…。
――リンチの作品では何がお好きですか?
P.90
押井 『ブルーベルベット』とか『ロスト・ハイウェイ』とか、みんな好きだよ。リンチの映画はどれも言っていることは同じ。生きていることの気持ち悪さだよね。
↑デビット・リンチ監督作品はまだ見たことがないので、上記は見てみようかと思います。
伊集院光もたびたびデビット・リンチ監督のことを話すので、前から興味がありました。
だから、この本の結論のようなことを強引に言ってしまえば、一番必要なのは友だちなんかじゃなくて仲間でもなく、もしかしたら家族でもない――師匠なんですよ。
P.166
――サラリーマンや学生の場合は、どうなるんです?
P.168
押井 そこが問題なんですよ。そういう師匠がどの世界にもいなくなったんだよね。僕が師匠をもてる最後の世代で、いまの人たちはかわいそうだと思う。
↑仕事をしていて師匠という人には出会えていません。
仕事っぷりが素晴らしいなと思う先輩はいますが…。
自分がちゃんとした仕事をしたいという自覚があり、それを褒めてもらえれば初めて嬉しいのであって、逆に言えば「今回はどうかな」と自分が思うものを褒められても、まったく嬉しくない。それは当たり前、自分が一番分かっていますから。
P.171
↑仕事を褒められるかどうかはどうでもいいタイプなので、イマイチピンと来ず。
常に仕事をやりきれていないという話かもしれませんが…。